大の猫好きの私、その度合いはというと、道端でネコを見かけたらその脇にしゃがみこんで話しかける。それがTVの画面であろうと写真であろ うとおかまいなし、ついつい手を出してナデナデし てしまう困り者。そんな私の数年来の夢、それはタイ・カンチャナブリ近郊にあるタイガーテンプルを訪れることでした。
初めてタイガーテンプルのことを知ったのは、友人からのメールに添付されてきた写真を見た時のこと。友人の膝の上に頭を乗せて大きな猫そのままにリ ラックスして写真に写っているトラたちの姿、広い敷地内やお寺の境内らしきところで遊ぶ子トラたちの写真を見た時、「いつか絶対ここに行く!」と心に誓っ たのでした。それから数年が過ぎ、今回世界一周旅行を計画するにあたって、「行きたいところリスト」にタイガーテンプルと真っ先にリストアップしたのは言うまでもありません。
タイガーテンプルについてはここ数年、かなりのメディアで取り上げられてますよね。ナショナルジオグラフィックスやアニマルプラネット、NHKで も、お寺でお坊さんたちと暮らすトラたちを紹介する映像を見たことがある人も多いかと思います。その影響か、タイガーテンプルはいまやかなりの人気観 光スポットのよう。バンコク・カオサンロード周辺にある旅行代理店に行けば、どこでも半日や終日ツアーが用意されていて簡単に参加することができます。も ちろん個人で電車とタクシーを使って行くこともできるけれど、翌々日ラオスに向かうことになっている私たちは手っ取り早く、ゲストハウスに併設の旅行代理 店で半日ツアー(850Baht)に申し込み。カンチャナブリ観光と抱き合わせのツアーもありましたが、タイガーテンプルで過ごす時間を削りたくないので今回はタイガーテンプルのみの訪問です。
朝10時、迎えのバンに乗り込み走ること3時間程、カンチャナブリに到着。カンチャナブリは第2次世界大戦時、日本軍による戦争捕虜の強制労働が行 われた場所であり、映画「戦場に掛ける橋」の舞台となったところですが、私たちのバンはそこから更に30分ほど走ったところにあるタイガーテンプルへ。は やる気持ちを抑えつつ、ドライバーから指し示された入り口らしきところで、まずは入場料の支払い(500Baht/人)と入場に際する注意事項を確認すると・・・
敷地内に住む動物たちはあくまで野生動物なので、その点忘れないで行動すること。万が一なんらかの事故で怪我をしたとしてもお寺に責任はありません、というような意味のことが書いてあり、その下に署名するようになっています。
ちょっとどきどきしながら署名し、いざ入場!しかし・・・門内に特に案内などなく、どこになにがあるかよくわからない・・・入場時にもらった地図をみながら、放し飼いの孔雀や牛を横目にうろうろ歩くこと15分ほどで広場のようなところに出ました。そしてそこには。
お坊さんやボランティアメンバーらしき青い上着を着た人たち、そしてビジター数人に囲まれて、木陰や噴水脇でだらーんと横になってくつろぐ子トラたちを発見!生後6ヶ月ということですが、体長1メートルはあり、貫禄十分。やはりトラはトラなのです。赤ちゃんの頃から完全に血抜きされたゴハンを食べ、人間に慣れている子たちですが、ネコとじゃれるようなわけにはいきません。ボランティアさんに促されて、こわごわと近寄ってそっと背中に触れてみると、思ったより滑らかな毛並み。ボランティアさんたちは心得ていて、さっさと私たちのカメラを取り上げて写真を撮ってくれます。
ボランティアさんたち、お坊さんたちはさすが慣れており、子トラたちがじゃれつくと、教育的指導!している姿も見ましたが、私たちビジターはあくまでこわごわ背中や頭を触るのみ。それ以上接触しようとするとささっと引き離されてしまいます。
ひとしきり写真を撮り終え、ボランティアさんの示すその日のアクティビティメニューを見ると、虎の谷でのトラたちの水遊び見学と赤ちゃんトラのミル クフィーディングの2種類があり、私はトラたちと一番ふれあいが多そうなミルクフィーディングを選択。ミルクの時間まで1時間弱の間、虎の谷の見学に行くことにしました。
ちょうど午後1時過ぎ、目が眩みそうな強烈な日差し中虎の谷へ向かう坂を下ると、少し奥のほうに仕切りがあり、いくつか立てられたビーチパラソルの ところで沢山のビジターが並んでいるのが見えました。そしてその更に奥、これまたかなり大勢のボランティアが立つ中、地面にごろごろと寝転ぶトラたちの姿 が!
思わず小走りに近寄り、仕切りの前でしばし立ち尽くす私。長年夢見てきたタイガーテンプルの虎の谷に実際に立ち、放心状態に陥ってしまったのでし た。スコットはそんな私の代わりに受付でトラたちとの記念撮影料金1,000Bahtを支払ってくれ、私はボランティアさんに手を引かれて仕切りの中へ。
仕切りの中には10頭前後のトラたちがおり、真昼の暑さでかなりだれている様子…。私たちはボランティアさんに手をひかれてトラたちの傍に近寄り「ここに座って!」と指し示されるまま、地面に寝転んでいるトラの横に腰を下ろしました。と、別のボランティアがトラの頭を持ち上げ、ドサっと実に無造作に私の膝 の上にトラの頭をのせ、案内役のボランティアが私たちのカメラで数枚角度を変えてパパっと写真撮影。終わるとすぐに次のトラのところへ移動し、ただただボ ランティアさんたちの言うままにポーズをとって写真撮影、そしてまた次のトラのところへ。ものの5分程度で撮影は終了。完全に 流れ作業化されていて、「トラたちとの触れ合いを楽しむ」というようなものではありませんでした。
拍子抜けし、しばし仕切りの前で呆然とした私ですが、気を取り直して次なるアクティビティ、赤ちゃんトラのミルクフィーディングへ。虎の谷から広場を通り、大きなゲートで区切られたトラたちの居住エリアへ移動します。2人のボランティアさんに伴われて檻の中に入ると、いました!!初めに見た子トラたちよりかなり小さめのコたちが3頭、入っていった私たちに興味津々!ここでボランティアさんたちからいくつか注意が。
「このコたちから目を離さないように気をつけて。絶対背中を向けちゃだめよ。それから、もし真正面から向かってきたら頭を手で押さえて方向を変えさせて。こんな風に」と、話すそばからボランティアさんに向かってとっとっと小走りにやってきたコの頭に手を添えて横に方向転換。「3ヶ月の赤ちゃんだけどトラだってことは忘れないでね。この前わたしも後ろからやられちゃって、ほら、こんなになっちゃった」ボランティアさんの膝の後ろの手の平ほどもある大きな内出血のあとを見て少々ビクつきながら、渡されたオモチャを手にいざ赤ちゃんトラと対峙!!
かなりやんちゃな赤ちゃんトラたち、天井から下がっているタイヤをジャンプしてくぐったり、オモチャにじゃれつく姿はネコそのまま!ひとしきり遊んでから今度はミルクフィーディング。ミルクボトルを見た途端、それまで思い思いに駆け回っていた赤ちゃんトラたちが夢中で膝の上に。前足で膝をモミモミしながらあっという間にミルクボトルをカラにしてしまいました。
ミルクのあとはお昼寝、それぞれごろんと横になり、それまでのやんちゃぶりはどこへやら、とろーんとした目でこの通り…
45分はあっという間でした。ネコ好き、ビッグキャット好きの皆様、プラス2000Baht払う価値ありありですよ!そうなのです、虎の谷でトラと一緒に記念撮影するには、別料金で一人1,000Baht、ミルクフィーディングも別途2000Bahtとられます。このあたりも実にしっかり観光地、ですが、それも安全面、そしてトラたちを養い施設を維持していくため収入源としての運用と考えれば仕方ないことなのでしょう。長年の夢だったタイガーテンプル訪問は、動物保護の理想と現実についても考えさせられる時間となりました。
【タイガーテンプルを訪れるにあたっての注意事項】
- 赤系の服を着ていると虎が興奮するので入場出来ません。また、タイガーテンプルはあくまでお寺ですので、露出の多い服装の人は入れてもらえません。気をつけましょう。
- 谷に虎が現れるのはたしか午後1時~4時の時間帯で、天候によっては中止になることもあるようですので、事前に確認することをお勧めします。
- ツアーで訪れる方は、タイガーテンプルで過ごす時間が何時から何時になるのか、事前に確認することをお勧めします。カンチャナブリ等と抱き合わせのツアーの場合、タイガーテンプルで過ごす時間が1時間程度と短く設定されていることも多々あるようです。
タイガーテンプルホームページ(英語): http://www.tigertemple.org/Eng/index.php