2009年8月31日、月曜日。世界一周旅行出発の朝は前夜に引き続きあいにくの大雨で、窓の外の明治公園が煙って見える。
5年間住み慣なれたこの古アパートとも今日でしばしのお別れ。目の前に明治公園、神宮外苑や神宮球場、ラグビー場を見渡すこの部屋は、夏には神宮外苑の花火大が目の前という最高の立地。地下はスポーツバー、それ以外のテナントはオフィスばかりで、近所への気兼ねなく音は出し放題、友人も招き放題と、気楽で便利な私たちの「城」だった。今回世界一周旅行に出るにあたって手放し難く思っていたところ、運よく友人のマークが家具ごとサブレットしてくれることになった。引越しの必要もなく、旅行後帰る家があるというのは願ってもない話で、出発準備もある程度は楽になったはず、だったのだ。
が。間際になって受けた仕事に追われて過ごすうちにあっという間に日がたち、出発まで1週間を切ってしまった。これまでにも海外への引越しや長い旅行を前に時間に終われヒヤヒヤしたことはあるけれど、ここまで段取りが悪かったことはない。仕事は終わらず、部屋には片付かない荷物が山積みで旅行準備もままならなないまま文字通り頭を抱える私と、ため息まじりになだめるスコット(ごめんなさい!)・・・。結局出発ぎりぎりまで掃除、荷造りに追われることになったのだった。
掃除やパッキングのラストスパートで結局徹夜し迎えた出発当日、午前中は公共料金の集金人やNTT、オーストラリアに送る愛車を受け取りきた業者などが入れ代わり立ち代わりやってきて、対応に追われるうちに過ぎた。慌ててシャワーを浴びて身支度し、最後のチェックをしていると、友人のウエンがランチを持ってお別れにやってきた。私たちと同時期にタイのパンガンに行くというウエンと近い再会を約束し今日からここに住むことになるマークが次々にやってきた。2人と再開別れの挨拶を交わし、時間ぎりぎりでタクシーに飛び乗った。
ようやく一息ついたのは、成田エクスプレスに乗り込んでからのことだった。長年の夢だった世界一周旅行に出発するのだか ら、ちょっぴりの感傷にしんみりとしながら押さえきれない期待、少しの不安に胸を高鳴らせながら日本をあとにする・・・なんて自分を思い浮かべていたわけ ではないけれど、もうちょっと出発前のときめきを楽しむ余裕が持てれば良かったな。そんな風に思ってもあとの祭。出発までに終わらせることができなかった 仕事のことが頭の隅にひっかかっていてテンションが低くなっている私だったけれど、スコットのいつもと変わらない穏やかな言葉に頭を切り替える。
「過ぎたことは過ぎたこと。もう心配するのはやめよう。仕事はバンコクでがんばって終わらせればいい。時間は十分あるよ。それより、もう出発だよ。ずっと楽しみにしてた世界旅行の始まりだ」
そう、くよくよしていても仕方がない。この数年間、何事につけても心配ばかりする悪い癖がついていた。考えるばかりで行動が遅れたり実行できないことが多くなり、それがまた次の心配の種になり・・・と悪循環。この旅行は、そんな東京での生活のサイクルから離れて自分と向き合う旅。自分の頭の中に篭ってばかりでなく、ちゃんと心を開いて毎日と向き合っていけるように。
明日からはタイ・バンコク、世界一周旅行のスタートだ!
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